インコを飼育する家庭において、人間には身近で有用でも、インコにとってはリスクの高い薬品や薬剤があります。インコは敏感な呼吸器系を持っているため、化学薬品や有害物質に対して非常に脆弱です。
以下に、リスクが高いと思われる順に薬品や薬剤を挙げてみます。どれもよく目にするものばかりですので、管理は十分気をつけましょう。
リスクの高い薬品や薬剤10選
フッ素系洗剤(例:トイレ洗剤、歯磨き粉など)
- フッ素は身近によく聞く物質ですが、元素のフッ素自体は有毒です。正しく配合したうえで虫歯予防の歯磨き粉などに使用されますが、あくまで人間に対する基準ですので、少量でもインコが摂取したり吸引すると急性中毒を起こす可能性があります。
殺虫剤(例:スプレータイプの虫除け、ゴキブリ駆除剤)
- 現在家庭用として出回っている殺虫剤の成分は、人や動物に対して極力害を抑えたタイプが多いですが、やはりインコは呼吸器系が敏感ですので、呼吸困難や中毒症状を引き起こすことがあります。絶対に油断してはいけません。取り扱い説明にも同室を避けるなど注意書きがあります。
カビ取り剤(例:カビ防止スプレー、カビ取りクリーナー)
- カビ取り剤には人間にとってもかなり強い化学薬品が含まれていて、目や鼻にダメージを与えるものがあります。もちろん、インコの呼吸器に大きな悪影響を与える可能性があるため、取り扱いは十分気をつけましょう。
重曹・クエン酸
- 重曹は無害なイメージが強いですが、少量でも誤って摂取した場合、小さなインコにとっては中毒を引き起こすことがあります。同様にクエン酸も安全なイメージが先行しますが、それだけにインコにとってはリスクの盲点となり注意が必要です。(それぞれの特徴については後述)
アロマオイル(例:ラベンダーオイル、ペパーミントオイル)
- アロマオイルの成分がインコの呼吸器を刺激し、最悪の場合死に至ることもあります。原因が特定できているものとそうでないものがあるようですが、アロマ成分は蓄積されるのでインコ飼育環境でのアロマ使用は控えましょう。猫がラベンダーオイルで中毒になるケースはかなり有名です。(→参考記事はこちら)
塩化ナトリウム(食塩)
- いわゆる「塩」は、過剰に摂取すると、インコにとって非常に危険で、塩分中毒を引き起こします。あまりに身近な素材ですので油断しがちですが、塩そのものは当然として、人間の食べ物を経由して間接的にインコの体内に入る可能性にも注意し、管理をしっかり行いましょう。
アンモニア水など
- 昔から虫刺されの医薬用や、汚れのこびりつきの清浄用として、アンモニア水などが出回っていますが、高い揮発性があり強い刺激臭を発生させるため、人間でも大量に吸い込むと失神する可能性があります。インコが吸入すると呼吸器の障害や健康不良を引き起こすため、非常に危険です。
ペイント作業時の塗料(アルキド系塗料など)
- ペンキ等に含まれる化学成分が揮発するとインコにとって非常に有毒です。吸引すると急性中毒を引き起こすことがあります。アルキド系塗料とはいわゆる昔ながらのペンキのことです。例えば、外で塗装作業をして、それを室内に持ち込んだ時など、間接的なリスクにも注意しましょう。
農薬や除草剤
- インコが農薬の成分に触れたり、空気中の残留成分を吸い込んだりすると、中毒症状が現れることがあります。害虫対策として観葉植物にインコのリスクにに気づかず直接使用してしまうケースや、衣服に付着したまま室内に入り間接的にインコが吸引してしまうケースなどが考えられます。なお、観葉植物はそれ自体が高リスクです。(→参考記事はこちら)
強力な清掃用除菌アルコールや塩素系漂白剤
- これらは、揮発性が高く人間にとってもリスクが高く取り扱いは慎重にすべき薬剤です。とくにアルコールの摂取や塩素の吸引など、言うまでもなくインコはひどい中毒症状を引き起こし最悪は死に至ります。揮発性の高さは吸引リスクの高さでもあるので、管理を徹底しましょう。
これらの薬品や薬剤はインコにとって非常に危険ですので、使用時は必ずインコを別の部屋に移動させたり、十分に換気をしたり、使用後の残留物に気をつけることが大切です。また、これらの製品を使用する前に、インコにとって安全な代用品を検討することをおすすめします。
また、ここに記載がないものでも、普段全く問題がないものでも、過剰摂取や愛鳥の体調によっては、あっというまに具合が悪くなることがあります。愛情をもって細心の注意を払いましょう。
代用品として重曹・クエン酸はあり?なし?
家の掃除関係の代用品として有名なのは、重曹やクエン酸ですが・・インコ飼育の視点で言えば、重曹はそもそもリスクが高い側と考えます。同じ考え方でクエン酸も同様です。

汚れをがっちり落とすのが目的の掃除で使うとなると、それなりの濃度が必要ですので、もうインコには耐えられません。もちろん、直接触れたり摂取するのは完全にアウトです。クエン酸も同様です。とくにクエン酸は天然由来で安全という情報により、ペットやインコにも安全と思われがちです。実はクエン酸で掃除した加湿器が噴霧した霧を吸い込んで、愛鳥が中毒を起こしてしまう事例が少なからず報告されています。(→参考記事はこちら)
ということで、そもそも重曹やクエン酸はどんなものなのか、インコ飼育のリスクはどうなのか、共有したいと思います。
重曹の特徴
重曹(じゅうそう)は、化学的には炭酸水素ナトリウムという化合物で、家庭や様々な分野で広く利用されています。無色の結晶または白い粉末として存在し、弱アルカリ性を持っています。純度の高い食用重曹と純度が低く(不純物が多い)掃除用重曹という分け方、塩から生成する国産重曹と天然石から生成する天然重曹という分け方などあります。奥が深い・・
- 弱アルカリ性:水に溶けると、弱アルカリ性の性質を示します。
- 無臭:重曹自体には強い臭いはありません。
- 多用途性:掃除、料理、健康管理、消臭、さらには科学実験など、さまざまな用途があります。
重曹の主な用途
料理・ベーキング:
- 膨張剤:重曹はお菓子やパンを焼く際の膨張剤(ベーキングパウダーの一成分)として使用されます。酸と反応して二酸化炭素を発生させ、生地を膨らませます。
- 酸味中和:料理で酸味を和らげるためにも使われます。
掃除:
- 消臭:重曹は臭いを中和する性質があり、部屋の消臭や冷蔵庫の脱臭、カーペットの掃除などに使われます。
- 汚れ落とし:弱い研磨作用があり、油汚れや水垢などをこすり落とすための掃除用品として利用されます。
- 洗濯:洗濯物に加えることで、汚れや臭いを取り除き、洗濯物を柔らかくする効果があります。
健康・美容:
- 歯磨き:歯磨き粉として使用されることもあり、軽い研磨作用で歯の汚れを取り除きます。
- 風呂:お風呂に入れると、肌を柔らかくしたり、かゆみを軽減したりする効果があると言われています。
- 消化促進:重曹を水に溶かして摂取することがあるが、胃酸過多の解消などに使われることもあります(ただし、使用には注意が必要です)。
消臭・除菌:
- ペットの臭い除去:ペットのトイレやペット用ベッドの消臭に使うことができます。
- 靴やカーペットなど、臭いが気になる場所にも使われます。
重曹とインコやペットとの関係
- 重曹は人間にとっては比較的安全な成分ですが、インコやペットに対しては、まず重曹を摂取しないように注意する必要があります。また、掃除に特化した物質を混ぜた純度が低い重曹は、希釈してもリスクが残る可能性があります。
- たとえ水で希釈したものでも、インコやペットがそれを過剰に摂取すると、中毒症状を引き起こすことがあります。そのためには、管理をしっかりすることが必要です。
クエン酸の特徴
クエン酸は、酸性の有機化合物で、特に果物(特にレモンやオレンジなどの柑橘類)に多く含まれている成分です。
- 酸味:クエン酸は酸味を持ち、果物や飲料に爽やかな酸味を与える成分です。
- 天然成分:自然界では、柑橘類の果物やベリー類に豊富に含まれています。また、野菜や発酵食品にも微量が存在しています。
- 水溶性:水に溶けやすく、さまざまな用途に利用されます。
クエン酸の主な用途
食品添加物:
- 酸味料として飲料や食品に使用され、保存料としても利用されます。
- pH調整剤として、食品や飲料の酸度を調整するために使われます。
掃除用具:
- クエン酸は家庭用の掃除にも使用され、特に水垢やカルキ除去に効果的です。水道水のミネラルによる汚れ(カルキ汚れ)を落とす際によく使われます。
- 除菌作用もあり、軽度の消臭効果もあります。
化学や医薬品:
- クエン酸は薬の成分や化学製品に使われることもあります。また、スポーツドリンクやビタミンC製品にも使われることがあります。
クエン酸のインコやペットとの関係
クエン酸自体は天然成分であり、適切に使用すれば人間にとっては比較的安全と言えますが、直接摂取した場合や濃度が高すぎる場合は、インコやペットにとって不快感や消化器系への大きな負担を与える可能性があります。インコが直接触れない、吸引しないように注意が必須です。
重曹・クエン酸代用の結論
重曹やクエン酸は、リスクの高い薬品や薬剤と比較すれば、比較的安全と言えなくもないのかもしれませんが、そもそも直接触れる、摂取することはアウトです。また、敏感な呼吸器を持つインコは、その成分が入った空気を吸い込むだけで中毒を起こします。となると、やはり積極的に使うのは控えた方がよいという結論になると思います。また、これまで大丈夫だったから、という思い込みは大変危険です。大型インコでも重篤なリスクにつながる可能性は否定できません。
大切なのは、目の前の愛鳥の様子をちゃんと見守り、観察し、その都度対応していくことに尽きると思います。
「インコにとってリスクの高い身近にある薬品や薬剤あれこれ」を最後までお読みいただきありがとうございました。繰り返しとなりますが、本サイトの記事内容含め、飼育リスク全般に関して、最終的には飼い主様の責任においてご対応くださいますようお願いします。